生き物と暮らすこと。人生が、予定と違っていくこと。
幼いころからの夢が、いくつかありました。
世界を旅すること。

リュックひとつで、知らない国を歩くこと。

そして、動物と暮らすこと。
近所のおばあちゃんが飼っていたボーダーコリーに、私は勝手に「コリーちゃん」と名前をつけていました。
もちろん、本当の名前は違ったと思います。
でも、子どもの私にとっては、その子は完全に「コリーちゃん」でした。
見かけるたびにうれしくて、
少し触れただけで、その日がいい日になったような気がして。
いつか、私も動物と暮らしたい。
そんなふうに、ぼんやり思っていました。
でも、私の人生設計の中心にあったのは、どちらかというと家ではありませんでした。
結婚も、出産も、家を建てることも。
正直、若いころの私の計画表には、そんなに大きく書かれていなかったと思います。
むしろ、ワーキングホリデーに行きたい。
※ワーキングホリデー(ワーホリ)は、18歳〜30歳の若者が協定国に約1年間(最長3年)
滞在し、語学学習、旅行、就労を自由にできる制度です。費用を現地で稼ぎながら異文化体験ができるため
留学初心者や費用を抑えたい人に人気です。オーストラリア、カナダ、イギリスなど約30の国
世界を見たい。
荷物は少なく、身軽に生きたい。
そんなことを考えていた人間が、今では子どものトイレトレーニングや発達のことに頭を悩ませ、家のことを考え、そして最近、犬を迎えました。
人生って、本当にわからないものです。
親族や母には、今の私を見てよく笑われます。
「あなたがこんなふうになるなんて、夢にも思わんかった」
たぶん、良い意味です。
たぶん、ですけど。
でも、自分でも思います。
まさか私が、家を建てて、家族と暮らして、こんな日が来るなんて。
あのころの私は、知りませんでした。
自由とは、どこか遠くへ行くことだけではないのだと。
小さな足音が家の中を走ること。
子どもが笑う声がすること。
犬がすぐにおなかを見せて、こちらを信じきった顔で見上げてくること。
そういう毎日の中にも、ちゃんと自由があるのだと。
もちろん、ペットと暮らす家には、考えることがたくさんあります。
床は滑りにくいほうがいい。
においや汚れのことも考えたい。
散歩から帰ったあとの動線も、意外と大事です。
ゲージやトイレの置き場所も、暮らし始めてから「あれ?」となることがあります。
人間だけで暮らす家と、ペットと暮らす家は、少しだけ設計の目線が変わります。
でも、それは決して特別なことではなくて、
「誰と暮らすか」を考えることなのだと思います。
子どもと暮らす。
夫婦で暮らす。
親と暮らす。
犬と暮らす。
猫と暮らす。
家は、ただの箱ではなくて、
そこにいる誰かの毎日を受け止める場所です。
最近は、家を持つこと自体を慎重に考える人も増えています。
住宅価格や物価の上昇、将来への不安、働き方や家族のかたちの変化。
「家を建てるのが当たり前」という時代では、もうないのかもしれません。
だからこそ、家を建てる理由は、昔よりもずっと個人的で、ずっと切実になっている気がします。
みんなが建てるから、ではなく。
年齢的にそろそろ、でもなく。
誰かに言われたから、でもなく。
この子と、この家族と、どんなふうに暮らしたいか。
その問いの先に、家づくりがあってもいいのだと思います。
犬を迎えてから、家の中の見え方が少し変わりました。
ここは滑りやすくないかな。
ここに寝そべったら気持ちいいかな。
この窓から外を眺めるのかな。
この場所で、子どもと犬が並んで遊ぶのかな。
以前は気にしていなかった床の高さや、光の入り方や、風の抜け方まで、急に愛おしく見えてくるのです。
家づくりは、人生設計に似ているのかもしれません。

思い通りにいくことばかりではない。
予定になかったことが起きる。
でも、その予定外の中に、案外、大事なものが混ざっていたりする。
世界を旅するはずだった私が、今は家の中で犬のおなかを撫でている。
それは、昔の夢をあきらめたというより、
夢の形が少し変わっただけなのかもしれません。
遠くへ行く人生もいい。
でも、帰る場所をつくる人生も、思っていたより悪くない。
ペットと暮らす家は、便利さだけでつくるものではありません。
その子が安心して眠れる場所。
家族が自然と笑ってしまう場所。
少し汚れても、少し散らかっても、まあいいかと思える場所。
そういう余白を、家の中につくることなのだと思います。
人生は、どうなるかわからない。
だからこそ、家は、今の自分たちだけでなく、
これから変わっていく自分たちにも、少しやさしくあってほしい。
犬と暮らし始めて、そんなことを思うようになりました。
ペットと暮らす家づくりでは、床材や動線、換気、収納、外まわりの計画など
暮らしに合わせて考えたいポイントがたくさんあります。
「今すぐ建てるかどうか」は決まっていなくても大丈夫です。
家族と、そして大切なペットと、どんな毎日を過ごしたいか。
そこから一緒に考えていけたらと思います。
最後に主観ではありますが、家とは、理想通りの人生を入れる箱ではなくて、
予定外のしあわせまで、ちゃんと迎え入れる場所なのかもしれません。
