段差の記憶から考える、バリアフリーな家

昔の家には、
なぜだか段差が多かった。

玄関の上がり框。
廊下と部屋の境目。
お風呂場の入り口。
勝手口の、ごっつい石の踏み台。


子どものころは、
それを「そういうもの」だと思っていた。


ひょいっと上がって、
ぴょんっと降りて、
何も考えずに通り過ぎていた場所。

でも、じいちゃんばあちゃんと15歳から暮らし、
ある日ふと気づく。

あの段差は、
若い人にとってはただの段差でも、
年齢を重ねた人にとっては
小さな山みたいなものなんだ、ということに。

「危ないから気をつけてね」

そう声をかけることはできる。

でも本当は、
毎回気をつけなければいけない家より、
気をつけなくても自然に暮らせる家のほうが、きっとやさしい。

バリアフリーという言葉は、
少し特別なものに聞こえるかもしれない。

介護のため。
高齢者のため。
将来のため。

もちろん、それも大切。

でも本当は、
バリアフリーは
「誰かのためだけ」のものではないと思う。

子どもがつまずかないこと。
洗濯かごを持って移動しやすいこと。
買い物袋を抱えていてもスムーズに入れること。
夜中にトイレへ行くとき、足元に不安が少ないこと。

それは、
毎日の暮らしの中にある
小さなストレスを減らすことでもある。

家づくりを考えるとき、
どうしても目に見えるデザインや間取りに気持ちが向く。

キッチンの色。
リビングの広さ。
外観の雰囲気。
収納の量。

もちろん、それも大事。


でも、
何十年も暮らす家だからこそ、
「年齢を重ねた自分」や
「一緒に暮らす家族の変化」まで
少しだけ想像してみてもいいのかもしれない。


今は必要なくても、
いつか必要になるかもしれないもの。

今は気にならなくても、
いつかありがたさに気づくもの。


それが、
段差の少ない家だったり、
手すりをつけやすい壁だったり、
広めの廊下だったり、
引き戸だったりする。

バリアフリーな家は、
かっこ悪い家ではない。

むしろ、
長く暮らすことをちゃんと考えた家だと思う。

誰かが無理をしなくていい家。
「危ないよ」と毎回言わなくていい家。
年齢を重ねても、暮らしをあきらめなくていい家。

じいちゃんばあちゃんの歩幅を見てきたからこそ、
家のやさしさは
見た目だけでは決まらないと思う。

段差が少ないこと。
動きやすいこと。
転びにくいこと。
手を添えられる場所があること。

そんな小さな設計の積み重ねが、
家族の安心につながっていく。

昔の家の、
あのごっつい石の段差を思い出すたびに思う。

家は、若いときだけのものじゃない。

子どもが育ち、
親が年を重ね、
自分たちも少しずつ変わっていく。

その変化を、
ちゃんと受け止めてくれる家。

それが本当の意味で、
長く暮らせる家なのかもしれない。


そして、こうした暮らしやすさは、
新築だけでなく、今あるお家を見直すことでも
少しずつ整えていくことができます。


小さなリフォームでも、
毎日の安心が変わることがあります。

上林山成宏建築設計㈱
新築だけでなく、リフォームのご相談も承っております。

「今の家を、これからも安心して暮らせる家にしたい」
そんな方も、どうぞお気軽にご相談ください。


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